ホシノアカリ ー水瓶ー

小説を書いています。日常や制作風景などを発信します。

そして健全に、恋人を殺したくなるということ

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 恋人の裸。

愛撫のために、その身体に触れることはない。

しかし、穴を掘るのに地面を触れないというのはありうるだろうか?

愛撫するのに、身体には触れない。

穴は掘るのに、地面には触れない。

 私は、体には愛撫など要らないのだと思うし、それは地面にとって穴が必要でないのと同じだと思う。

 では、私たちの身体は意図せずに愛撫を感じるときがあるではないか。

頬が風に当たる感覚。

想っている人物との、偶然な接触

 地面だってそうだ。

流水によってできる溝。

隕石などによって形成されるクレーター。

 ごく自然なことではないか。

そして、私はこういうことを言っている。

 私は、愛撫のために恋人の身体に触れることはない。

恋人の輪郭をなぞる。

そこには力は必要なく、ただ触れるだけでいい。

必要が出てくれば、恋人のほうから力を求めてぶつかってくる。

 輪郭は外側。

つまり、それをなぞるということは骨格をなぞるということでもある。

 恋人の輪郭。

柔らかい場所。

硬い場所。

ささくれた場所。

敏感な場所。

鈍感な場所。

恥ずかしい場所。

愛らしい場所。

 内側をなぞるというのは殺意だ。

ときどき、愛が有り余って恋人を殺したくなる。

それはつまり、こういうことなのだろう。